

2026年8月3日
おすすめ記事特定技能(介護)は高いのか?採用単価と定着で見る投資対効果
この記事の結論(Direct Answer)
特定技能(介護)の投資対効果は、コストの絶対額ではなく定着率でほぼ決まります。
欠員を派遣・紹介で埋め続ける変動費(概算・一例で年約360万円/名)と比べれば、特定技能の受入(初期約60万円+年約34万円の支援費、給与は日本人と同等)は、定着さえすれば数字上は十分に見合います。焦点は「安いかどうか」ではなく「採用の反復コストをどれだけ止められるか」です。
Key Facts(前提の整理)
- 介護職員の必要数は2026年度 約240万人(2022年度比+約25万人)、2040年度 約272万人(厚生労働省・第9期介護保険事業計画、2024年7月公表)。欠員の恒常化は構造的リスクです。
- 特定技能「介護」の在留者数は67,871人(2025年12月末・速報値/出入国在留管理庁)。受入見込数の上限は5年間(2026〜2030年度)で126,900人(2026年1月閣議決定)。制度の器にはまだ拡大余地があります。
- 日本人介護職員の離職率は12.4%(2職種計・令和6年度/介護労働安定センター)。人手不足感のある事業所は65.2%。
- 特定技能は給与を日本人と同等以上とすることが制度要件です(=「安い労働力」ではありません)。投資対効果は賃金差ではなく、定着と反復コスト削減で生まれます。
- 以降の投資対効果試算に用いる金額はすべて概算・一例であり、貴施設の条件により変動します。実際の判断は最新の一次資料と見積もりで要確認ください。
「高い / 安い」ではなく「元が取れるか」で見る
特定技能(介護)の受入を検討する決裁者から、まず出てくる問いは「結局いくらかかるのか」です。
手数料や支援委託費の相場は、こちらの特定技能(介護)の費用・料金完全ガイドにまとめていますので、ぜひご覧ください。
本記事はその一歩先、「支払ったコストの元が取れるのか(採算・投資回収)」を扱います。
結論から言えば、特定技能の投資対効果を左右する最大の変数は初期コストの絶対額ではありません。定着率です。理由はシンプルで、特定技能には「途中で辞められても費用を按分して取り戻す仕組み」が制度として存在しないからです。つまり、早期に離職されれば初期投資はそのまま逸失し、また一から採用コストが再発生します。逆に定着すれば、一度払った初期コストは長期にわたって回収されていきます。
だからこそ投資対効果は、次の3つの観点で語るべきです。
- 欠員を派遣・紹介で埋め続ける「変動費」との比較(コストの絶対額ではなく、埋め続ける総額との差)
- 採用の反復コストの削減(辞める→また採る、の反復を何回止められるか)
- 入国前教育による早期戦力化=OJT負担(隠れた人件費)の圧縮
なぜ「定着率」が投資対効果の心臓部なのか
介護は人員配置基準が収益に直結する事業です。欠員が続けば、シフトが組めず、最悪の場合は受入制限や空床につながり、逸失利益が発生します。
その欠員を埋める手段が、派遣や人材紹介による反復採用です。ここで見落とされがちなのが、採用は一度きりの費用ではなく、離職のたびに再発生する変動費だという事実です。採用コストの絶対額を1回分だけ見て「高い/安い」を判断すると、この反復構造を見誤ります。投資対効果とは、この反復をどれだけ止められるかの勝負です。

概算投資対効果試算モデル
以下は、決裁者が社内稟議で「考え方の骨子」として使える概算モデルです。
数値はいずれも保守的な代表値であり、実際の金額は貴施設の採用チャネル・地域・条件で変動します。必ず最新の見積もりと一次資料でご確認ください。
出典の性格を区別するため、公的な一次資料に基づく値と、業界相場(民間・各社引用)に基づく値を分けて示します。

選択肢 | 初期コスト(概算) | 年間ランニング(概算) | 主な性格 | 出典の性格 |
|---|---|---|---|---|
欠員を派遣で恒常補充 | ― | 年 約360万円/名 | 定着しても毎年発生し続ける変動費 | 業界相場(民間) |
欠員を紹介で正社員補充 | 約105万円/名 | 給与のみ | 早期離職のたびに初期費用が再発生 | 業界相場(民間) |
特定技能を受け入れ | 約60万円/名(国内採用寄り・保守側) | 約34万円/名(支援委託 月約2.8万円) | 給与は日本人と同等。定着すれば反復コストが止まる | 支援委託費は入管庁調査平均、紹介費は業界相場 |
※派遣年額の内訳(概算):時給1,700円×160時間×請求倍率1.3で月約30万円→年約360万円。海外呼び寄せの場合、特定技能の初期コストは100万円超になることもあります。
この表の読み方
派遣で欠員を埋め続けると、定着に関わらず毎年約360万円が出ていきます。一方、特定技能は初期約60万円+年約34万円で、しかも給与は日本人と同等(制度要件)。
つまり派遣という「終わらない変動費」を、「定着する自社人員」に置き換えることで、逸失回避と採用反復コストの削減が同時に効いてきます。
ただし、これは定着することが前提の試算です。1年で辞められれば、この構図は成立しません。だからこそ投資対効果の土台は定着率にあり、初期コストの多寡ではありません。
定着を支える支援の質については失敗しない介護登録支援機関の選び方で詳しく整理しています。
離職率の比較には「注記」が要る
「では外国人材の定着はどうなのか」という論点には、慎重な扱いが必要です。日本人介護職員の離職率は12.4%(令和6年度・介護労働安定センター)、特定技能介護人材の自己都合離職率は10.6%(2019年4月〜2022年11月の累計・出入国在留管理庁の有識者会議資料)という調査結果があります。数字だけ見れば近い水準ですが、両者は集計期間・母数・算定条件が異なり、単純比較で優劣を断定することはできません(要確認)。
重要なのは横並びの数字ではなく、「自施設で受け入れた人材が定着するかどうか」です。そしてそれは、採用チャネルと支援体制の設計で大きく変わります。
入国前教育が投資対効果に効く理由
投資対効果のもう一つの源泉が、早期戦力化によるOJT負担の圧縮です。これは表に出にくい「隠れた人件費」を削るレバーです。
介護分野では、特定技能・技能実習のいずれも入国前に一定水準の日本語能力を満たすことが要件です。しかし、日本語能力が一定水準に達していても、介護実技の研修を十分に受けないまま入国すると、実際の介護現場で戸惑うケースが見られます。そうなれば、指導役の職員が本来の業務時間を割いて実技を一から教えることになります。この指導コストは請求書には載りませんが、確実に発生している人件費です。入国前に介護実技まで踏み込んだ実践的な教育を受けていれば、この立ち上がり負担は大きく圧縮されます。
JQC直営のCIJT(カンボジア日本技術大学)では、入国前に座学180時間+実習32時間(計200時間超)の教育を行っています。
この教育設計が定着と早期戦力化にどうつながるかは、離職率98%の秘密/日本式介護教育の全貌で詳述しています。
制度の背景:育成就労との対比(軽く)
なお、2027年4月1日に施行される育成就労制度では、人材が転籍した際に育成にかかった費用を関係機関間で按分・調整する仕組みが想定されています。一方、特定技能にはこうした費用回収の機構がありません。だからこそ、特定技能では「そもそも辞めない設計=定着設計」が採算を直接左右します。これは制度環境の背景として押さえておきたい対比です(JQCは登録支援機関であり監理団体ではないため、育成就労の監理そのものを担うわけではありません)。
JQCが定着率を高める仕組み
ここまで述べたとおり、特定技能の投資対効果は定着率で決まります。JQCは、その定着の確度を高めることに一貫して取り組んできました。
- 定着率 約98%(勤務開始から3年以内)/失踪率 0%(過去6年間)/実績対象100名以上。
- CIJT(カンボジア日本技術大学)での入国前教育(座学180時間+実習32時間)により、現場OJT負担を圧縮し早期戦力化を図ります。
- 教育・紹介・定着支援を一気通貫で提供する登録支援機関として、受入後の伴走までを設計します。
これらは「必ず回収できる」ことを保証するものではありません。しかし、初期投資の回収確度を高め、再採用コストの反復発生を抑えるという点で、投資対効果の土台を支える実績です。

よくある質問(FAQ)
Q1. 特定技能(介護)は結局、日本人採用より安いのですか。
A. 「安い労働力」ではありません。特定技能は給与を日本人と同等以上とすることが制度要件です。投資対効果は賃金差ではなく、欠員を派遣・紹介で埋め続ける変動費の削減と、定着による採用反復コストの抑制から生まれます。相場の内訳は費用・料金完全ガイドをご覧ください。
Q2. 何年で「元が取れる」と考えればよいですか。
A. 施設の欠員コストや採用チャネルで大きく変わるため、一律の回収年数はお示しできません(要確認)。本記事の概算モデルでは、派遣の年約360万円という変動費に対し、特定技能は初期約60万円+年約34万円のため、定着が続くほど差は開きます。まずは貴施設の条件で試算することをおすすめします。
Q3. 早期に離職された場合、初期コストは戻りますか。
A. 特定技能には、育成就労で想定されるような費用按分・回収の制度的な仕組みがありません。そのため早期離職は初期投資の逸失に直結します。これが投資対効果を定着率で語るべき最大の理由です。
Q4. 外国人材のほうが離職しやすいのではないですか。
A. 特定技能介護人材の自己都合離職率10.6%(累計)という調査はありますが、日本人の12.4%とは集計条件が異なり単純比較はできません(要確認)。定着はチャネルと支援体制の設計で変わります。詳しくは登録支援機関の選び方をご参照ください。
Q5. 自社支援と委託、投資対効果の観点ではどちらが有利ですか。
A. 支援の質は定着に直結し、定着は投資対効果の土台です。初回導入では体制構築の負担も考慮が必要です。判断材料は登録支援機関に委託するか自社かにまとめています。
まとめ
- 特定技能(介護)の投資対効果は、初期コストの絶対額ではなく定着率でほぼ決まります。特定技能には費用按分・回収の仕組みがないため、定着設計が採算を直接左右します。
- 判断軸は「安いか」ではなく、欠員を埋め続ける変動費(概算・一例で年約360万円/名)をどれだけ止められるか。採用の反復コストと隠れたOJT負担(=隠れた人件費)の削減が投資対効果の源泉です。
- 次アクションとして、貴施設の欠員コストと採用チャネルを前提に、まずは概算で採算を試算してみることをおすすめします。数値はすべて要確認のうえ、条件を当てはめてご判断ください。
関連記事(内部リンク)
- 特定技能『介護』徹底ガイド(制度全体像・ピラー)
- 特定技能(介護)の費用・料金完全ガイド(手数料相場・隠れコスト)
- 失敗しない介護登録支援機関の選び方(定着実績で選ぶ)
- 離職率98%の秘密/日本式介護教育の全貌
- 特定技能(介護)|登録支援機関に委託するか自社か
出典
- 出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」(特定技能「介護」67,871人/2025年12月末・速報値): https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri07_00215.html ※速報値。※公開前に最新の一次資料で要確認
- 出入国在留管理庁「特定技能の分野別運用方針」(介護の受入見込数上限126,900人/2026年1月23日閣議決定): https://www.moj.go.jp/isa/policies/ssw/nyuukokukanri01_00132.html ※公開前に最新の一次資料で要確認
- 厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」(2026年度 約240万人)(2024年7月公表)※公開前に最新の一次資料でURL・数値を要確認
- 介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」(日本人介護職員の離職率12.4%)(2025年7月公表): https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf ※公開前に最新の一次資料で要確認
- 出入国在留管理庁 有識者会議資料(特定技能介護人材の自己都合離職率10.6%/2019年4月〜2022年11月累計)※累計・母数・算定条件が日本人統計と異なり単純比較不可。公開前に一次資料で要確認
- ROI試算モデルの各金額(派遣月額・紹介手数料・支援委託費・特定技能初期コスト等): 入管庁 登録支援機関調査(支援委託費平均28,386円/月・人)および業界相場(民間・各社引用)に基づく概算・一例。すべて公開前に最新の見積もり・一次資料で要確認
執筆者情報
株式会社JQC(登録支援機関)。特定技能(介護)人材の教育・紹介・定着支援を一気通貫で提供。直営のCIJT(カンボジア日本技術大学)で入国前教育(座学180時間+実習32時間)を実施し、定着率 約98%(勤務開始から3年以内)・失踪率 0%(過去6年間)・実績対象100名以上の支援実績を持つ。

関連記事

.png)
