

2026年7月29日
おすすめ記事特定技能(介護)の受け入れに使える助成金・補助金は?
この記事の結論(Direct Answer)
特定技能(介護)の「制度そのもの」に直接お金が出る助成はほぼ存在しません。国や自治体の助成・補助は、受け入れに付随する具体的な行為・投資——たとえば「教育した」「就労環境を整えた」「賃上げした」——に対して支給されます。まず国の助成金4つと自治体補助を「何に対して出るか」で切り分け、自施設で使える制度を要件ベースで見極めることが、費用負担を下げる第一歩です。
Key Facts(前提の整理)
- 特定技能制度への直接給付型助成はほぼない。助成は「行為・投資」に紐づく(後述の切り分け表を参照)。
- 国の助成金は主に4つ。介護の受け入れで最も使いやすいのは人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)=1措置20万円・上限80万円(令和7年度に定率から定額へ変更)。
- キャリアアップ助成金の正社員化コースは、特定技能1号は原則として対象外(在留通算5年・更新不可=帰国前提のため)。「特定技能なら正社員化助成が使える」は誤り。在留資格で可否が分かれる。
- 自治体補助は代表例として東京都・神奈川県・大阪府・愛知県などが実施。東京都は居住費 年額60万円/入居初期費用5万円(1回限り)等。ただし年度で公募・予算枠があり、金額は要確認。
- ほぼすべての制度で事前申請・事前計画が原則。着手後の事後申請は不可のものが多い。
特定技能「制度」にお金は出ない —— 「行為」に出る、という切り分け

助成金の相談で最初にほどく必要があるのが、「特定技能で外国人を雇えば、それだけで助成金がもらえるのでは」という期待です。
結論から言うと、それはほぼありません。国や自治体が用意する助成・補助は、在留資格の種類そのものに対してではなく、受け入れに伴って貴施設が実際に行った投資や取り組みに対して支給されます。
この切り分けを最初に押さえておくと、「自施設は何をすれば、どの制度の対象になるのか」という実務の視点で制度を選べるようになります。下表が全体像です。
助成が出る対象(=貴施設が行うこと) | 代表制度 | 出どころ |
|---|---|---|
就労環境の整備(多言語化・相談体制の整備等) | 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) | 国(厚生労働省) |
教育・訓練(OJT/OFF-JT・業務日本語等) | 人材開発支援助成金 | 国(厚生労働省) |
設備投資+賃上げ | 業務改善助成金 | 国(厚生労働省) |
有期雇用から正社員への転換 | キャリアアップ助成金(特定技能1号は原則対象外) | 国(厚生労働省) |
介護分野の受入・定着(日本語・専門知識・居住費等) | 自治体の外国人介護人材受入環境整備補助 | 都道府県 |
つまり助成金の検討とは、「特定技能を使うかどうか」ではなく「受け入れに際して、どんな環境整備・教育・処遇改善を行うか」を設計する作業だと言えます。受け入れ全体の設計と助成金の活用は、本来セットで考えるべきものです。
国の助成金4つ——正式名称・対象・支給額の目安

ここからは国(厚生労働省)の主要な4制度を、それぞれ「何に対して・いくら・どんな要件で」出るのかを整理します。
いずれも2026年度(令和8年度)時点の内容であり、申請前に最新の交付要綱でのご確認が前提です。
① 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
介護の受け入れで最も使いやすい制度です。就労環境整備計画の認定を受けたうえで、外国人労働者特有の事情に配慮した措置を新規に導入・実施すると支給されます。支給額は1措置あたり20万円・上限80万円(最大4措置)の定額です(令和7年度に定率から定額へ変更されました)。
対象となる措置の例は、雇用労務責任者の選任、就業規則等の多言語化、苦情・相談体制の整備、一時帰国休暇制度の導入、業務マニュアルや標識の多言語化などです。要件として、計画期間終了後の外国人労働者の離職率が15%以下であること(=定着していること)が求められ、事前に計画の認定を受ける必要があります。
2026年度も存続します。令和8年4月1日の改正で社会保険適用要件や関連する添付書類が廃止され、以前より申請しやすくなりました。定着を前提とする設計は、JQCが重視する長期視点とも親和性が高い制度です。
② 人材開発支援助成金(教育・訓練)
従業員へのOFF-JT/OJT(職場を離れた/職場内での訓練)に対して助成する制度です。特定技能を含む外国人も対象になり得ますが、対象者は雇用保険の被保険者であることが前提です。介護技能、安全衛生、業務に関連するビジネス日本語などが対象になり得る一方、一般教養や生活日本語は対象外となる可能性があるため、実施前に労働局への確認が安全です。
訓練計画の事前提出が必要で、人材育成支援コースではOFF-JT10時間以上などの条件があります。2026年度も存続します。入国前教育を終えた人材に、入職後の継続的な学びをどう設計するかを考える際に検討したい制度です。
③ 業務改善助成金(賃上げ+設備投資)
事業場内最低賃金を50円以上引き上げ、あわせて生産性向上のための設備投資を行うと支給される制度です。助成率は3/4〜4/5、上限は最大600万円です。外国人専用の制度ではありませんが、外国人受け入れに「付随して」職場全体の処遇改善・設備更新を行う場面で活用できます。
注意点として、賃上げ・投資に着手する前に交付申請が必要で、事後申請は認められません。2026年度は申請受付が9月1日開始、締切は最低賃金の発効日前日か11月末の早い方とされていますが、年度で変動するため要確認です。
④ キャリアアップ助成金(正社員化コース)※誤解の多いポイント

有期雇用から正社員への転換を支援する制度ですが、特定技能1号は原則として対象外です。これは在留期間が通算5年・更新不可で、帰国が前提となるため、長期の正社員雇用を目的とする制度の趣旨に合わないためです。技能実習生も同様に対象外です。
対象になり得るのは、「技術・人文知識・国際業務」、永住者・定住者、特定活動(EPA介護福祉士等)、特定技能2号などです。「特定技能なら正社員化助成が使える」という説明は誤りですので、稟議や比較検討の資料に記載する際はご注意ください。在留資格によって可否が明確に分かれる典型例と言えます。なお、対象範囲は最新のQ&A原本での再確認をおすすめします。
介護に特化した国の支援と、自治体の補助金
国の「支援サービス」は現金給付ではない
介護分野には、外国人介護人材受入・定着支援等事業(国。実施はJICWELS等)があります。これは相談支援、巡回訪問、受入準備セミナー、研修などの「支援サービスの提供」であり、施設への現金給付ではありません。後述の自治体補助と混同しないことが大切です。
自治体が実施する外国人介護人材向けの補助の多くは、地域医療介護総合確保基金(消費税を財源とし、国2/3・都道府県1/3で構成)を活用し、各都道府県が独自に実施しています。重点は「居住支援」「日本語学習」「専門知識学習」に置かれる傾向があります。
自治体補助の代表例
以下は代表例であり、いずれも年度ごとに公募・予算枠があり、金額・補助率・令和8年度の公募有無は要確認です。
単年度枠で受付終了となる例もあるため、早めの情報収集をおすすめします。
事業名(代表例) | 主な支援内容 | |
|---|---|---|
東京都 | 外国人介護従事者受入れ環境整備等事業 | 日本語・専門知識学習経費の一部補助。居住支援=居住費 年額60万円/入居初期費用5万円(1回限り)。対象在留資格にEPA・技能実習・介護福祉士養成留学生・在留資格「介護」・特定技能1号を含む |
神奈川県 | 外国人介護人材受入施設環境整備事業費補助金 | 外部講習参加・日本語教育・孤立防止/メンタルヘルス等 |
大阪府 | 外国人介護人材受入施設等環境整備事業 | 技能実習・特定技能・留学・特定活動等の受入施設の定着取り組みを予算範囲内で交付 |
愛知県 | 外国人介護人材受入促進事業 | 意思疎通の円滑化・日本語学習支援・記録負担軽減等(単年度枠で受付終了となる例あり) |
東京都の居住費 年額60万円は明示された金額ですが、それ以外の自治体の具体的な上限額・補助率は年度・自治体で異なるため、本記事では断定を避けます。
貴施設の所在地の都道府県・市区町村の最新の公募要領を必ずご確認ください。
助成金を使う前に押さえる5つの注意点
助成金は費用負担を下げる有効な手段ですが、前提を外すと不支給や返還につながります。以下は制度共通の注意点です。
- 年度で予算・要件・名称が変わる。 特に自治体補助は単年度・予算枠に上限があり、受付終了となる例があります。
- 原則「事前申請・事前計画」が必要。 多くは着手前の申請が条件で、事後申請は不可です。取り組みを始める前に相談・申請の段取りを組む必要があります。
- 受給の前提条件がある。 雇用保険適用事業所であること、対象者が被保険者であること、計画の認定、定着(離職率)要件などが課される制度があります。
- 在留資格で可否が分かれる。 特にキャリアアップ助成金の正社員化コースは、特定技能1号が原則対象外です。
- 不正受給には重いペナルティ。 不支給・返還に加え、事業主名の公表や以後の不支給等の措置があります。社会保険労務士等の専門家の関与が安全です。
助成金は「もらえる制度を探す」のではなく、「受け入れ設計の中で、結果として使える制度を組み込む」という順番で考えると、無理のない申請計画になります。費用の全体像(実費・手数料相場や隠れコスト)とあわせて把握したい方は、特定技能(介護)の費用・料金完全ガイドもご参照ください。助成でカバーできる範囲と、自己負担として残る費用の切り分けが見えやすくなります。
JQCができること——受け入れ設計とあわせて整理する
どの助成・補助が貴施設で使えるかは、在留資格・雇用形態・実施する取り組み・所在地の自治体施策など、複数の要件の掛け合わせで決まります。JQCは登録支援機関として、教育・紹介・定着支援を一気通貫で担い、受け入れ全体の設計を支援できる立場にあります。CIJT(カンボジア日本技術大学)での入国前教育(座学180時間+実習32時間の計200時間超)を含む定着重視の設計は、就労環境整備や定着要件を前提とする助成金の考え方とも重なります。
助成金の申請そのものは社会保険労務士等の専門領域であり、JQCが申請代行を安請け合いすることはありません。一方で、「受け入れをどう設計すれば、どの助成の要件に近づくか」という上流の整理は、受け入れ設計の相談とあわせて個別にご案内できます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 特定技能(介護)で外国人を雇うだけで、もらえる助成金はありますか。
A. 在留資格そのものに出る直接給付型の助成はほぼありません。就労環境の整備、教育・訓練、賃上げ・設備投資といった具体的な取り組みに対して助成が出る仕組みです。まずは「自施設で何を行うか」から逆算して対象制度を探すのが実務的です。
Q2. 一番使いやすい国の助成金はどれですか。
A. 介護の受け入れでは、人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)が使いやすい制度とされます。1措置20万円・上限80万円の定額で、多言語化や相談体制整備など、受け入れ時に取り組みやすい措置が対象です。ただし事前の計画認定と、離職率15%以下の定着要件があります。
Q3. 特定技能の人を正社員にすればキャリアアップ助成金がもらえますか。
A. 特定技能1号は原則として正社員化コースの対象外です。在留期間が通算5年・更新不可で帰国が前提のため、制度趣旨に合わないためです。対象になり得るのは技術・人文知識・国際業務、永住者・定住者、特定技能2号などです。稟議資料に記載する際はご注意ください。
Q4. 自治体の補助金はどこで確認できますか。
A. 貴施設の所在地の都道府県・市区町村が窓口です。東京都・神奈川県・大阪府・愛知県などが代表例ですが、年度ごとに公募・予算枠があり、金額や補助率も異なります。最新の公募要領を必ず確認し、単年度枠のため早めに情報収集することをおすすめします。
Q5. 申請は自分たちだけで進められますか。
A. 制度によっては可能ですが、多くが事前申請・事前計画を要し、要件も複雑です。不正受給には重いペナルティがあるため、社会保険労務士等の専門家の関与が安全です。JQCでは、どの助成が使えそうかの上流の整理を、受け入れ設計の相談とあわせてご案内しています。
まとめ
- 助成・補助は「特定技能制度」ではなく、就労環境整備・教育・賃上げなどの「行為・投資」に対して出る。まずこの切り分けで対象制度を探す。
- 国の主要4制度のうち介護受け入れでは人材確保等支援助成金が使いやすい。一方、キャリアアップ助成金の正社員化は特定技能1号が原則対象外という誤りやすい点に注意。
- 自治体補助は代表例(東京都・神奈川県・大阪府・愛知県等)を起点に、年度・予算枠・金額を最新の公募要領で必ず確認する。
次アクションとして、貴施設の在留資格・取り組み内容・所在地から「どの助成が使えそうか」を一緒に整理してみませんか。受け入れ設計とセットで考えることで、費用負担の下げどころが具体的に見えてきます。
出典
- 厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/gaikokujin.html /パンフレット https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/001682050.pdf
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/38819_00009.html
- 厚生労働省「業務改善助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html ※令和8年度の正確な締切日は公開前に最新の一次資料で要確認
- 厚生労働省「キャリアアップ助成金」 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html ※特定技能1号の対象可否は最新のQ&A原本で要確認
- 厚生労働省「外国人介護人材受入れの支援」 https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_28131.html
- 東京都福祉保健財団「外国人介護従事者受入れ環境整備等事業」 https://www.fukushizaidan.jp/122gaikokujin/ ※居住費60万円以外の具体額・令和8年度公募有無は要確認
- 神奈川県「外国人介護人材受入施設環境整備事業費補助金」 https://www.pref.kanagawa.jp/docs/n7j/cnt/f535601/gaikokujinkaigo.html ※具体的上限額・補助率は要確認
- 大阪府「外国人介護人材受入施設等環境整備事業」 https://www.pref.osaka.lg.jp/o090040/houjin/jinzai/kannkyousebi.html ※具体的上限額・補助率は要確認
- 愛知県「外国人介護人材受入促進事業」 https://www.pref.aichi.jp/soshiki/korei/ukeiresokushin.html ※具体的上限額・補助率・令和8年度公募有無は要確認
助成金・補助金の金額・要件・締切・公募の有無は年度で変わります。本記事の数値は2026年度(令和8年度)時点の目安であり、申請前に必ず所管の最新の交付要綱・リーフレットでご確認ください。
執筆者情報
株式会社JQC/登録支援機関。特定技能(介護)人材の教育・紹介・定着支援を一気通貫で提供。CIJT(カンボジア日本技術大学)を直営し、入国前に日本語と介護実技を教育する体制を構築。定着率 約98%(勤務開始から3年以内・実績対象100名以上)、失踪率 0%(過去6年間)。介護施設の受け入れ設計・定着支援の実務知見に基づき、本記事を作成しています。

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